与えられた情報を鵜呑みにしたり、誰かの言いなりに行動したり、今まで「常識」と言われていた行動を疑いもなくすると痛い目にあいます。場合によっては今後の人生を大きく左右するほどです。
これらの根本的な原因は自分の頭で考えていないこと、つまり思考停止なのです。
今回はどのようにして思考停止から脱却するのか?なぜ自分の頭で考えることが幸せにつながるのか?を教えてくれる “思考停止という病” (著:苫米地 英人)を紹介します。
この本は古本屋でジャケ買いしました。「お前はホント考えてないよな」と色んな人によく言われていたので、そんな自分から脱却したいという思いが私を動かしました。
今回紹介する”思考停止という病」では
・なぜ思考停止しやすいのか
・思考停止しないための生き方
・論理的思考力の高め方
・「自分の頭で考え続け、ヒルクライミングする脳」の作り方
を知ることができます。
大企業に入社すれば、将来は安泰!
〇〇するだけでお金が稼げる!
この人の言うことさえ聞いていれば幸せになれる!
偉い学者やTVが言っているんだから、間違いない!
この本を読む前に↑のように考えていた人は、本に書かれていることを実践することで↓のようになります。
最近、終身雇用は無くなりつつあるし、大企業は45歳リストラや黒字リストラ、ジョブ型雇用を進めている…。安泰なんて存在しなくないか?
〇〇するだけで稼げる…?誰に何の価値を提供しているんだ?その業界で稼いでいる人のトップと平均はどれくらい?これは詐欺なのでは?
この人は何者?過去の発言や実績は?そもそも、誰かの言うことを鵜呑みにするのは危険では?
この学者は何者?TVで出されたデータは正しい?都合よく切り貼りされていないか?
今までの自分はよくこんなデタラメを信じていたな…。怖い怖い。
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「思考停止」とは?
本題に入る前に「思考停止」の定義を共有します。
「思考停止という病」では「創造的な問題解決活動」をしなくなった人のことを指します。
もっと詳しく説明すると、
・分析する(考察する)
・意思決定をする
・問題を解決する(最適解を見つける)
・仮説をつくる
という4つの活動を停止した人のことを言います。
なぜ思考停止しやすいのか
この疑問の答えには3つの要因があると本書は述べています。
前例主義
「昔からこのやり方」「この業界ではこれが普通」「去年はこうだったから今年もこれで」
このような言葉を耳にされた方は多いと思います。
何かを行う時、過去のやり方や結果を引き継ぐという考え方です。この前例主義の根底には日本人によくある「前へならえ精神」が存在していると指摘しています。
過去と同じやり方が正しく、波風や混乱を起こすこと無くものごとが進行する。そういう思い込みが考える力を奪っているのです。
知識不足
2つ目の要因は「知識不足」です。
ここでは脳の重要な2つの機能について紹介されています。
ストコーマ
心理的な盲点のことです。目には映っているのに見えていない(認識できていない)ことを指します。
例えば「今日、赤い車を何台見ましたか?」と聞かれたらほとんどの人は答えられないはずです。なぜなら大半の人は普段から意識して赤い車を見ているわけでも、重要な情報でもありませんから。
RAS(Reticular Activating System):網様体賦活系
簡単に言うと「脳をパンクさせないためのフィルター」です。五感から入ってきた情報を全て脳に記憶させると脳がパンクしてしまいます。そうならないためにフィルターを掛け、自分にとって必要な情報だけを受け入れるための仕組みです。
まとめると、自分が知らない・重要だと思っていない情報はRASの働きで排除されていまう。そこで排除された情報はスコトーマとして盲点となり目には映っても脳が認識しなくなる。
逆に言えば、知っていること・重要だと思う情報を増やせばスコトーマが無くなるということでもあります。
ゴールがない
最後の要因です。ここで言うゴールとは現状の外側にある本気で成し遂げたいことを指します。
「現状の外側にある」を強調したのは、人間にはコンフォートゾーン(安全地帯)に留まろうとする本能があるからです。現状維持をしたがる本能とも言えます。
例えば「会社の社長になる」というゴールを設定したとします。ここで言う「会社」が現在自分の勤めている会社であるならば、現状の内側にあるゴールです。現状の内側にあると「このままでいいか」という現状維持をしたがる本能が働くのでいつまで経っても行動することはありません。
しかし、「会社」が独立起業の場合は現状の外側にあるゴールです。独立起業という名のコンフォートゾーンが外側に移動したので人間はそこに向かうための行動を起こします。
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思考停止しないための生き方
この本で書かれていたことを3ステップでまとめました。詳細を知りたい方はぜひご購入を。
自分の興味のあることを知る
思考停止しないためには現状から抜け出す必要があります。そのためにはスコトーマを外さなければなりません。そのスコトーマを外す大前提となるのがあなた自身の「興味」なのです。
当然の話ですが人間は興味の無いことに対して真剣に取り組みません。強制的に「やれ」と言われても苦痛なだけです。そもそも「やれ」と命令されている時点で自分の人生を生きることができていませんよね?
ゴールを決める
あなたの興味が見つかったのであれば、次はゴールを決めます。この時に3つ注意点があります。
他人の決めたゴールではダメ
例えば「親が医者だから自分も医者になる」「親の夢を叶えるために〇〇になる」といったゴールです。本当に自分がやりたいことが、たまたま親の願いと一致していたのであれば問題はありません。問題なのは自分がやりたいワケではないことをゴールにすることです。
また、「〇〇さんのようになりたい」というのも本書ではオススメしていません。理由はなりたい人からしか情報が得られない、目標とする人物が「~をやれ」と言ったらそれしか実行しなくなるからです。つまり自分の頭で考えなくなってしまうからです。代表的なダメな例が「オウム真理教」です。
簡単すぎるゴールではダメ
今の自分の手の届くようなゴールでは現状の延長線上にあるものにしかなれません。つまり、突き抜けた存在になることができなくなります。この本ではゴールは「どうやって達成すればいいか分からない」くらいのものをオススメしています。
自分中心にならないこと
「お金持ちになりたい」「異性にモテたい」といった目標より、「世の中のため」「数多くの人を幸せにする」といった目標の方が抽象度が高いのでオススメです。
大量の知識をインプットする
最後のステップです。興味、ゴールを明確にしたら知識をインプットします。
なぜ思考停止しやすいのかでも取り上げたように、知識不足がスコトーマを発生させて思考停止を招きます。逆に言えば知識を大量に入れればスコトーマが外れ、思考停止を避けられるということです。
しかし、ただ闇雲に知識をいれればいいというワケではありません。前の2ステップで明らかにした興味とゴールが、これから取り入れる知識と合致している必要があります。
例えば、ケーキ屋になりたいのに中華料理を勉強する。サッカー選手になりたいのに野球の練習をする…。ケーキ屋になりたいなら最初はケーキの勉強をするべきですし、サッカー選手になりたいなら最初はサッカーの練習をするべきですよね?
ケーキ作りに中華料理の技法を取り入れたいのであれば、ケーキ屋になってから勉強すればいいだけの話です。サッカーの例でも同じです。
ここで皆さんにこんな疑問が浮かぶはずです。
「大量の知識をインプットする」ってどうやるんだー!
著者は「本を読むこと」と言っています。
しかし、ただ読むのではありません。この本には4つの読み方が紹介されています。詳しくはその目でお確かめください。
読書に関して言えばこちらの記事が参考になります。
論理的思考力の高め方
ここまでで知識と情報を取り入れることの重要さを話しました。しかし、知識と情報があっても論理として上手に構築・運用できなければ意味がありません。なのでここからは論理的に物事を考える力、ロジカルシンキングの高め方を説明します。
トゥールミンロジック
この本では「ロジカルシンキングのベースとして使うべき論理技法」として紹介されています。3つの要素で構成されています。
クレーム
主張のこと。
データ
主張を裏付ける事実のこと。信用性の高い客観的な資料であればあるほど情報的な強度を持つ。
ワラント
論証の根拠のこと。データが本当に主張の裏付けになっているのかを説明する。
例えば、あなたが親に「車関係の大企業に行け」と言われたとしましょう。
クレーム(主張):「車関係の大企業に行きなさい」
データ:「福利厚生の良さ」「給料が高い」「安定している」など
ワラント:「自分が大企業に行ったおかげで今の生活がある」「不自由な生活をさせなかった」
では、絶対に行きたくないと思うあなたならどうやって反論しますか?
「残業ばっかりでよくケンカしていたよね?」「車に興味がない」「車関係である必要性は?」「最近は45歳リストラとかあるよ?」…挙げればキリがないのでこの辺で。
この例だと親の主張は通りそうにありませんね?なぜでしょうか?
もっとロジックを強める方法
先ほどの例では親の主張は通りそうにありませんでした。答えはロジックが弱かったからです。どんなに正しく見える主張でも、ロジックが弱ければ相手にされません。ここではそんなロジックを強くするための方法を3つ紹介します。
トゥールミンライティングワーク
トゥールミンロジックで文章を書くことです。具体的にはデータ、ワラント、クレームを使ってブログやノートを書くこと。ここでのポイントは自分の意見ではなく、事実をベースにして書くことです。
事実から考え事実で語ることは、公共性と信頼性が高いデータをベースに話を展開することになります。なので文章の論理や主張の強度が上がるだけでなく、ワラントについても考えるようになります。
データを集めること
主張するだけなら幼稚園児でもできます。しかし、考える力が弱い幼稚園児は主張しかできません。同じように考える力が弱い大人も主張しかしません。
知識や情報がなければ考えることができません。ここで言う「考える」とは分析したり判断したりすることを指します。
ワラントをしっかり考えること
自分の論理が崩壊するとしたら、ほとんどの場合ワラントが弱いことが原因なのです。特にディベートの場合ワラントが狙われます。(ワラントを攻撃することをバッキングと言います)
ワラントを強くするためには、自分ひとりで考えるときはワラントに自分でツッコミを入れてみることです。つまりバッキングを自分で行います。こうすることでワラントを補強するためのデータを集めることができます。
先ほどの例を振り返ってみましょう。
クレーム(主張):「車関係の大企業に行きなさい」
データ:「福利厚生の良さ」「給料が高い」「安定している」など
ワラント:「自分が大企業に行ったおかげで今の生活がある」「不自由な生活をさせなかった」
反論した時、データもワラントも攻撃しましたよね?データは少なくワラントも弱かったです。
では、主張を変えずにデータとワラントを変えてみましょう。
クレーム(主張):「車関係の大企業に行きなさい」
データ:「自動車産業は無くならない」「自動運転技術に使われているプログラムを学ぶという考え方もできる」「電気自動車や水素カーの普及で環境に貢献できる」…
ワラント:「自動運転技術の導入(大手企業や政府発行の資料)」「国内・国外の自動車産業の推移データ」「海外の自動車産業のデータ」「排気ガス排出量のデータ」…
どうでしょう?だいぶテキトーに変えてみましたが、最初の例よりは納得感が出たのではないでしょうか?個人の体験談ではなく信憑性のあるデータや環境に貢献できるという証拠を提示されたら「ちょっと考えてみるかな?」という気になりませんか?
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「自分の頭で考え続け、ヒルクライミングする脳」の作り方
最後に紹介するのはこの本の目指すべき状態である「自分の頭で考え続け、ヒルクライミングする脳」はどうやって作り出すのか?ということです。
「ヒルクライミング」とは簡単に言うと抽象化することです。「ヒルクライミングする脳」とは物事を抽象化してまったく新しくクリエイティブする思考を指します。
この脳の状態を作り出すためには後で説明する「バックグラウンドプロセッシング」が必要になります。これを手に入れるためには2つの用語を知っておく必要があります。
抽象思考
この章の説明で出した「抽象化」をするのに必要な思考です。言葉だけで説明すると「ある事柄の共通点を見つけ、ひとくくりにする」ための考え方です。
言葉だけでは分かりにくいのでダイエットで考えましょう。抽象思考ができない人は下の図のように考えます。
痩せる=食事制限をする。痩せる=ジョギングをするという短絡的な考え方しかできません。
一方、抽象化ができる人はこのように考えます。
青い矢印が具体化、赤い矢印が抽象化です。食事制限は食べ方の問題、もっと言えば食事に関わる事柄です。ジョギングは有酸素運動、運動という分類でひとくくりにできます。
この図を見てピンと来た方もいるかと思います。
「有酸素運動があるということは、無酸素運動という選択肢もあるのでは?」
「食べ物についても考えられるのでは?」
「痩せるだけなら脂肪吸引とかどう?」
更に抽象化と具体化を進めたのが下の図です。
どうでしょう?一番最初と比べてかなり選択肢が増えましたね。痩せるための手段は何があるか?それぞれの手段にはどんなやり方があるか?メリット・デメリットは?など様々なことについて考えることができます。
例えば薬・サプリや手術は短時間で済むものの多額の費用がかかります。食事や運動は費用はかからないものの時間がかかります。どちらにせよ、現状に合わせて自分の都合のいい選択肢を選ぶことができます。
さらに考えるなら
赤枠が追加した部分です。
ここまで来ると「仮説思考」になってしまうので、詳しく知りたい方は↓の本が参考になります。
仮説思考も抽象思考と同じくらい必要になってくる考え方なので読んで損はないです。
並列思考
「電話をしながらメモをとる」というように、何かをしながら別のことを同時に行うことを指します。
この機能を鍛えるためには「無意識でできること」を増やすことです。例えば、小学生の時に苦労した掛け算も大人になった今ではパッと答えが浮かびます。キーボードだって特に意識して打っているという方は少ないのではありませんか?
なぜ意識しないでできるようになったのか?それは続けてきたからです。日常生活で必要か不要かはともかく続けている内にできるようになった。この数を増やすことが重要になってきます。
バックグラウンドプロセッシング
抽象思考によって物事の抽象度を上げ、並列思考を鍛えることで「バックグラウンドプロセッシング」が起こります。
簡単に説明すると「無意識下で脳が勝手に情報を処理してくれる」機能です。以前、↓の記事で説明した「なぜ別のことをしている時にひらめくのか?」の答えがこれです。人間の脳は無意識下で同時並行で膨大な情報を処理しています。だから常に考える必要が無いのです。
この機能を高めるのに必要なのが「知識量」です。「アイデアのつくり方」でも紹介しましたが、この世の問題はすでに存在している要素の組み合わせでしかありません。ならば知識が多ければ多いほど有効な解決策が出て来やすいということになります。
ビジネスもほとんどが最適化です。知識さえ揃っていれば答えはほぼ決まります。
感想
今まで立ててきた目標を振り返ると、現状の延長線上だったり本気で達成したいと思っていなかったことを思い知らされました。
「現状から抜け出すための目標を立てれば、それに関する情報が自然と目に飛び込んでくる」と書いてありましたが、まさにそのとおりでした。
私は父親と妹と同居しているのですが、色々あって出て行きたい、一人暮らしをしたいと思いました。その時からどうやって転居先を決めるのか?必要な金額や保証人は?定職についてどれくらい経てば審査が通りやすくなるのか?といった情報を集める(集まる)ようになりました。
トゥールミンロジックについても意識して使っていたのは読んだ最初だけで、だんだん記憶から無くなっていました。この記事を執筆する時に「こんな話もあったな」とようやく思い出した程度にしか使っていませんでした。
トゥールミンロジックは日常でもこういった文章を書くときでも役に立つ考え方です。本にならって常に意識して使う→常に使うのが当たり前(無意識で使う)ように使い続けていきたいと思います。
抽象化の図も2回くらい作り直しているので、やはり理解が足りていないということが露呈しました。抽象思考と仮説思考が区別できていなかったんですね。本には仮説思考に関しては書かれていなかったのですが、後天的に身につけられる天才を越えるための唯一の方法なので紹介させていただきました。
この本ではさんざん「知識を増やせ」と言っています。3年前の自分なら「本を読めばいいか」で本ばかり読んでいた事でしょう。実際、本にも読書をオススメしていますし。しかし、今の自分は読書だけではダメだと知っています。
得た知識は自分の外に出さないと使えるものかどうかが分からないからです。合っているならOK。間違っていたなら理解や解釈を修正しなければなりません。知識は単体では役に立ちません。外部に出して効果を得て初めて役に立つのです。
目標を立てること。知識を得ること。事実をベースに論理を組み立てること。これらに加えて「実際に行動して確認する」という話があっても良かったのでは?と思った一冊でした。
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まとめ
今回紹介したのは「思考停止という病」(著:苫米地 英人)でした。
本記事では以下のことを紹介しました。
・現状や常識と言われるものを疑え
・知識が多いほど自分の助けになる
・興味と知識と現状の外にあるゴールを一致させろ
・全ての物事はトゥールミンロジックで考えろ
・特にワラントの補強は入念に
・知識を増やせ
・抽象思考や仮説思考を学び、トゥールミンロジックと組み合わせろ
・無意識でできることを増やせ
・知識を増やせ
今回紹介しきれなかった中には、読書のやり方や自分の人生を生きるためのヒントなどたくさんの有益な情報も含まれています。もっと知りたいと思った方はぜひご購入を。
今回覚えてほしいのはたった一つだけ。
知 識 を 増 や せ
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